その日は、いつになく緊張していた。
沼の最長老のカメが、沼のみんなを集めて言った。
「この沼の水は、年々減りつづけておる。あと10年もしないうちに干し上がるじゃろう。」
若い魚たちは一斉にざわついた。
「そんな!俺たち死んじゃうのかよ!」
「ウソでしょ?そんなことあるわけないじゃん」
「カメのじいさん、とうとうボケたか?」
「うおっほん!」
年老いたカメは続けた。
「じゃが、我々が生き延びる方法が一つだけある。」
・・・・・
「皆、今日から少しずつ陸に上がる練習をするんじゃ。はじめは苦しいかもしれん。少しずつでいいから陸でも呼吸ができるように進化するのじゃ。我々にはそれしか生き延びる方法はない。今日10秒陸に上がれたら、明日は11秒・・・というように、少しずつでいいから、やるしかないんじゃ。」
当然、信じる者、信じない者がでてくる。
それでも、沼のほとんどの若い魚たちは陸に上がる練習をするようになった。
しかし、1匹だけは「バカバカしい」と言って拒んだ。
まるまる太ったコイである。
コイは、毎日毎日陸に飛び上がり苦しむ他の魚たちを見て笑っていた。
・・・やがて5年が過ぎた。
沼の魚たちは皆、水中でも、陸上でも自由に呼吸ができる体に進化していた。
「お前たち、よくやった。次は食べる物を変えなくてはならん。陸の上にある木の実や雑草を喰えるようになるのじゃ。」
陸で生活していくには、陸にあるものを食べなくてはならない。
鼻をつまんで、まずい、まずい、木の実を食べた。
雑草を食べた。
そのころ、コイはというと、とてもハッピーな気分だった。
なぜなら、沼のみんなが陸に上がって食事をするようになったため、
沼の食事を独り占めできたからである。
大好きなミミズを腹いっぱい食べた。
だが、カメが言う通り、沼の水は年々減っていた。
コイはそれに気づいてはいたが、
「そのうち大雨が降ってまた元に戻るさ♪みんな骨折り損だよ。」
いつか大雨が降り、今まで通りの生活がいつまでも続くと信じていた。
・・・そして、10年が過ぎた。
あんなにあった沼の水は、今ではただの水たまり程になってしまった。
そしてそこには瀕死のコイが横たわっていた。
「カ、カメさん・・・助けて・・・くれ・・・」
「皆と同様、お前にも生き延びるチャンスはあった。じゃがワシの忠告を無視したのはお前自身じゃ。自業自得というものじゃな。」
「そ・・・そん・・・な・・・」
「世の中は絶えず変化していく。それに合わせて我々も進化せねばならん。進化するか、しないかを選択する余地などないのじゃ。」
「うぅぅ・・・」
「・・・」
「かわいそうじゃが、進化することを拒んだ者には死しか訪れんのじゃ・・・」
呼吸をしなくなったコイに沼の魚たちは手を合わせた。
皆、手足が生えていた。
・・・。
いつかに読んだ「なぜ、エグゼクティブはゴルフをするのか?」という本の中に書いてあった話です。
パソコンでイラストを書く練習がてら、ブログに書いてみました。
オレはこの話をいつも忘れない。
寝る前とかもふとこの話を思い出したりします。
「栄枯盛衰」を忘れないように日々生活していますが、
この話はそれに似た話で、とても記憶に残っています。
オレは甘い汁を吸っている間は「このままでいい」と何も考えなくなってしまうという短所があります。
進化する(上を目指す)ことを忘れるんです。
ただただ「このままの状況が一生続け」と願うだけ。
そんな時にこの話を思い出すと、
「あかんあかん!寝ぼけとる場合じゃない!」
と、はじめの一歩を踏み出すことができるんです。
さあ。
ただなんとなく過ぎていく明日にしないように、毎日、何かをしよう。
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